ゆめカフェ

夢叶うサードプレイス

基本的に私は、何をしてでも生きていける、と思っているんです。どうしても「hal」がなきゃダメとか、人気の店を作りたいとか、何かを伝えたいとか、成果を残したいという野心は、不思議とないのです。  後藤由紀子(「hal」店主)

『毎日のことだから。7分目くらいがちょうどいい』後藤由紀子著(PHP研究所

  静岡県・沼津にある雑貨店「hal」の店主、後藤由紀子さんの著書です。2人のお子さんを育てながら小さな雑貨店を始め、全国でも有名な人気店に育て上げました。

 それにしても、すがすがしいほどの執着のなさ。冒頭の言葉を読んで、いつも自然体の後藤さんらしいな、と感じました。そして、こんなに肩の力を抜いていても、大きな夢をかなえることができるんだ。いやむしろ、こんなに肩の力を抜いているからこそ、大きな夢を実現することができたのではないだろうか、と考えたのです。もちろん彼女には、たぐいまれなる才能がある。でも、成功の一番の理由は、もっと別にある気がしたのです。

  それは、「楽しむ気持ち」を軸にしていること。後藤さんは、本書の中で、お店を楽しむというあたりまえの気持ちを大切にしたい。雑誌の取材がくるのはありがたいけど、これから先、まったく注目されなくなっても全然大丈夫、と話しています。

 人からの評価を目標にすると、認められなければハッピーになれない。こんなに頑張っているのに認められない、つらい、もうやめようとなってしまうでしょう。注目されなくても、ほめられなくても、だれに何と言われようと、「自分が楽しい」という軸がある人は、周囲のことが気にならない。やめようったってやめられない。頑張らなくたって続けたくなる。本気でワクワクしていることは、となりの人に伝わる。ワクワク、ワクワク、そのとなりの人、そのとなりの人と伝染していって、やがて大きな輪になる。「hal」がうまくいったのは、偶然のラッキーではなく、必然でしょう。

 

 実際、成功した人は、肩の力が抜けまくっている人が多い気がします。世界中にフォロワーがいるブロガーちきりんは、ブログを始めた当初、ほとんど読者がいなかったのだそう。しかも3年間も。さらに、それ以前は、誰も見ない紙の日記を何十年も書いていたというから驚きです。誰かが見ているとか見ていないとか、そんなことはどうでもよくて、書くことが心底楽しかったのでしょう。楽しくなければそんなに続くわけがありません。

 何がそんなに楽しいのか。ちきりんは、自身の著書でこう述べています。「自分の考えたことを文章化すること、自分の思考を言語化し、構造化すること、そういう作業自体が楽しいのです。その記録を、読者の方にも同時に楽しんでいただけるのであれば、それだけで望外の喜びです」(『「自分メディア」はこう作る!』ちきりん著文藝春秋)。

 つまり「自分が楽しい」が一番、読者は次。その優先順位が、ぶれることはありません。ですから、ブログが炎上してもご本人は対岸の花火でも見物するかのような優雅な物腰。批判されようと、自分が本心で思っていることを書かなければ、楽しくない。思考の軸が定まっていると、周囲の物事にもどっしり構えていられるのでしょう。

 

 そうはいっても、楽しいことって、そんな簡単には見つからない……と思いますよね。これも誰もが実践できる、いたってシンプルなルール。後藤さんは、お店を楽しむ方法について、先の著書でこう話しています。「流行に左右されず、自分が使ってよかったと思う雑貨を置く」。

ネットショップは自分ひとりで完結できる       前田めぐる(コピーライター)

『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』

前田めぐる著(日本経済新聞出版社

 2人の子どもを育てながら、約30年間にわたって、コピーライター・プランナーとして働いてきた前田めぐるさん。働く母の環境が今よりずっと厳しかった時代、どのように仕事を続けてきたのか。新聞広告を見て興味を持ち、取り寄せました。

 働く母にとって、もっとも大きなハードルのひとつは、やはり「子供が病気になったとき」でしょう。私の関心事も、まさにこの一点。本書には前田さん自身の体験と、どう乗り越えたかが詳しく綴られていました。

 前田さんは、お子さんが1歳のときに耳の病気になり、医師に「保育園を休んで毎日通院するように」と言われたそうです。病気はなかなか治らず、3歳まで通院生活。打ち合わせは?執筆は?診断を受けたときは目の前が真っ暗になったそうです。

 こんな時、睡眠時間を削ってでも時間を確保して「これまでと同じように働かなくては」と考えますよね。ところが前田さん、ここである決断をします。「これは、どうあがいても、今までと同じようには働けないってことだな」と腹をくくり、今いる場所でできることをやっていこうと、すばやく頭を切り替えたのです。

 まず「日時が動かせない取材の仕事」「打ち合わせの多い広告の仕事」「納期のさしせまった仕事」は受けられないことを、周囲に表明。すごいなと思ったのは、彼女がキャリアを重ねてきたライターの仕事にこだわらなかったこと。「仕事が細くなっても、とにかく続けることを考えよう」と模索した結果、たどりついたのが、なんとまったく畑違いの「ネットショップ」でした。

 ネットショップなら、初期投資が少ないうえ、商材さえあれば、受注から発送まで「自分ひとりで完結できる」。ひとりで仕事ができれば、通院もできるし、子供の発熱のたびに、取材に行けるか、原稿の納期に間に合うか、打ち合わせの日程を変更しなくてはと、ハラハラすることはありません。商材は、知人の紹介で出会った韓国製ウェディングドレスにしました。

 前田さんは、病院通いが続いた期間、ネットショップや時間的制約のないコンサルティングの仕事を中心にマイペースで仕事を続け、娘さんが完治してからライティングの仕事に復帰。同じ働き方にこだわっていたら、疲労困憊して途中で折れていたかもしれません。

 じつは私も数か月前、娘の通院で1ヶ月ほど、保育園をお休みしたことがあります。流行性角結膜炎が長引き、3週間たってやっと通園許可をいただいた翌日に、今度は風邪で発熱。ちょうど仕事が立て込んでいる時期で、心身共に消耗しました。

 夫はスケジュールの調整が難しい仕事ですし、両親は九州在住で、簡単に頼める距離ではありません。ワラにもすがる思いで病児保育所に行っても流行性角結膜炎はあずかり不可、近所の友人は「まかせて」と言ってくれましたが、もしもうつったら……と思うと、やっぱり遠慮しました。

 けっきょく撮影の仕事の日、たまたま病気で学校を休んでいた息子に、3歳の娘の世話をお願いして出かけるしかありませんでした。携帯電話と友人の電話番号のメモを息子の手に握らせて。

 「もう無理かも」と追い詰められているときに手にとったのが、この本です。まさに目からウロコ。今までの仕事にしがみつかず、ライフステージに合わせて柔軟に働き方を変える。働きやすい環境がなければ自分でつくる。前田さんの働き方から、仕事を長く続けるうえで大切なことを教わりました。

「一点豪華基準」で選ぼう!           ちきりん(”おちゃらけ社会派”ブロガー)

大きな決断をしたとき。本当にこれでよかったのかな、あとで後悔しないかな。よく考えて飛び込んだのに、納得したはずなのに、何度も気持ちが揺れる。そんなとき、スパーンと迷いを断ち切ってくれる言葉がこれ。 「〈一点豪華基準〉で選ぼう!」

 ちきりんさんによると、人が大事なことを決めるときの基準は、たいてい「総合評価方式」。たとえば、家を購入するとき、デザイン、利便性、自然環境、価格といった複数の選択肢について検討し、総合点で判断します。

 でも、たくさん選択肢があると、あれも大事、これも大事、どれも譲れないと、いつまでも迷ってしまいますよね。そこで、欲しいものはたくさんあるけど、その中で、自分にとって一番大事な点を「ひとつだけ」決めるのです(=一点豪華基準)。ひとつだけに絞ってしまえば、あとは簡単。一点豪華基準が一番優れている選択肢を選ぶだけ。あれこれ比較して迷うことはありません。

 ちきりんさんは、さらに重要なポイントを指摘しています。

「事前にどんなに慎重に検討して選んでも、選んだ後には必ず不満が残ります」

 そこでまず、あとから不満が出てくることを前提とすること。一点豪華基準で選んでおけば、たとえ不満が出たとしても、自分にとってベストな選択だったと満足できるというわけです。

 今の私にとっての〈一点豪華基準〉は、「時間を忘れて夢中になれること」

 夢中になれることを選べば、今日一日をハッピーな気分で過ごせる。まずはそれだけでOK。さらにプラスαのメリットもあります。没頭すれば集中力が高まって、自分にとって最高のパフォーマンスが引き出せる。クリエイティブな発想がわく。くるくる続けているうちに、やがていったん捨てたと思った他の選択肢も、自然にそろうかもしれません。

 決断をするために重要になるのが、デザイン、利便性、自然環境、価格のうち、「自分にとって最も大事な選択肢はどれか」を知ること。ちきりんさんは、本書の中でそう語っています。

 もう数か月前のことになりますが、「これは明らかに決断を誤ったな」と感じた一件がありました。AとBの選択肢があって、Bを選んだのだけど、間違いだったと悟った時点で、急いで引き返して、Aに移りました。痛手は大きかったけど、まだ取り返しがつく段階だったのがラッキーでした。

 代償が大きかっただけに、あとからなぜBを選んでしまったのかと後悔しましたが、一度体験したことで、「これだけはイヤ」というポイントが、身をもって分かりました。その後、Aに不満な点が見つかっても、とるにたらない小さなことと感じ、まったく気になりません。

 別のエピソードをもうひとつ。離婚経験がある友人の男性は、最初の結婚で、自分がパートナーに求めるたったひとつの条件が、はっきり見えたのだとか。再婚した女性は、”相当なじゃじゃ馬”だそうですが、10年以上たった今も、ラブラブカップルです。

 こうして振り返ってみると、手痛い失敗も「自分にとって最も大事な選択肢はどれか」を知るための、貴重な経験だったと言えるでしょう。失敗も悪くないかも。そう思えてきます。

出るのなら、出過ぎて打たれない杭になる! 石村由起子(「くるみの木」オーナー)

東京でさえ、まだカフェや雑貨店が珍しかった1994年。主婦だった石村由起子さんは、奈良のはずれに、雑貨とカフェの店「くるみの木」をオープンしました。

 「お茶が飲めて、暮らしの雑貨が買える場所をつくりたい」と思ったものの、今までにない新しいスタイルは、そう簡単には受け入れられませんでした。閑古鳥が鳴く日々を乗り越えてようやく軌道に乗り、新聞や雑誌の取材を受けるようになったころのこと。新たな問題が起こりました。

「びっくりするような中傷や噂話」が聞こえてくるようになったのです。根も葉もない噂話にとまどう石村さんに、ご主人が、こんな言葉をかけます。

 「世に出るということは、いろんなことを言われたり、起こったりして当たりまえなんや。出る杭は打たれる。けど、出過ぎた杭は打たれへんねん。だから、打てないくらいのええ店をつくれ」。

 出る杭は打たれても仕方がない。打たれるということは、杭の出方が中途半端ということ。誰も打てなくなるほど、上に出て行かなくては――。出る杭は打たれる体験は、石村さんにとって、むしろ奮起するきっかけになったのです。このときから、周囲のことがあまり気にならなくなったのだそう。

 それにしても、信頼のおけるパートナーがいるということは、心強いものです。「たとえ100人に何を言われても、たったひとりのわかってくれる人がいれば、それでいい。私はやっていける」。この時会社員だったご主人は、後に石村さんのビジネスパートナーとして、「くるみの木」を支えていくことになります。

 

 手ごろな価格とおしゃれなデザインが人気の眼鏡店「JINS」の社長、田中仁さんも、新聞のコラムで「出る杭は打たれる」経験を語っています。福岡で1号店をスタートさせてから、急成長し始めたころ、これまで業界の中心的存在だった老舗店から、さまざまな妨害やいやがらせを受けたそうです。

 あるときは、大学の研究室と共同で開発を進めていた機能性眼鏡のプロジェクトを横取りされたことも。社運をかけた一大プロジェクトだっただけに、痛手は相当大きかったことでしょう。押しも押されぬ人気店に成長した今では、杭が打たれることは、「もう一切なくなった」と語っています。

 

石村由起子さんと田中仁さんに共通することは、打たれても立ち止まらなかったこと。それは、自分が本当にやりたいこと、進みたい方向が明確に定まっているから。石につまずいても、転んでも、すぐに立ち上がって、まっすぐ突き進んでいけるのでしょう。自分が目指す「北極星」をしっかり定めたいものです。

 

以前、取材をさせていただいた石井希尚さんが、執筆した新刊本を送ってくれました。その中にあった聖書の一節--

 

能あるリーダーは議論しない

人を導くべき立場の者は、ちょっとやそっとのことでケンカをするようなことではいけない。むしろ、すべての人に優しくし、それが誰であっても、怒らずに、教えるべきことを正しく教えられる人でなければならない。中にはあなたのことが気に入らず、あなたのなすことにいちいち反対したり、妨害したりする人もいるだろう。しかしそういう人たちをも、忍耐強く、柔和な心で指導する者であるべきだ。

テモテへの第2の手紙2章23~25節『超訳聖書 生きる知恵 エッセンシャル版』石井希尚著(ディスカヴァー・トゥエンティワン

いちばん簡単で、今すぐできることを一つ試そう           松浦弥太郎(「COW BOOKS」代表)

『軽くなる生き方』松浦弥太郎著(サンマーク出版

 

「田舎暮らしがしてみたいなあ」。夏休み初日の今朝、11歳の2号がつぶやきました。都会より田舎のほうがいい。だって木登りの練習はできるし、動物とも遊べるでしょう。理想は、「おさるのジョージ」みたいな感じ。あんなふうに、うちも田舎の別荘があればいいのに。

 ああ、あれはね、アメリカのお話。欧米では、一般市民でも別荘を持つのが珍しくないみたいだけどね。うちは無理無理。いつもなら、そんなふうに聞き流していたでしょう。でも、娘のつぶやきを耳にして、松浦弥太郎さんの言葉が浮かびました。

 「思いつきは100パーセント実行する!」。

 そうは言っても、別荘なんて、どう考えても無理があるでしょう。経済的なことだけではなく、建物の管理などハードルが盛りだくさん……。

 「資本金や人手が必要なことはすぐにできないけれど、自分ひとりでできる小さなことも必ずあるので、まずはそこから着手する」(松浦さん)。

 いきなり大きな目標にトライすると、途中で挫折してしまいがちだけど、今すぐできる小さなことはすぐに結果が出るから、達成感を感じることができます。それが原動力となって、次の小さな一歩、次の小さな一歩。小さな一歩をくるくる繰り返しているうちに、「いずれ大きなこともできるはず」(松浦さん)。

 「自分ひとりでできる」というのも大きなポイント。

 「人に頼まなくては実現できない=自分の夢を人の手にゆだねている」ことになります。人が動いてくれるまで、じっと待っているうちに、気持ちが冷めてしまうかもしれません。思いつきは、熱いうちに行動に移すことが肝心。まずは、自分ひとりでできる、小さなことから、今すぐスタートしてみる。くるくる前進しているうちに、周囲の人が、「こんな方法もあるよ」と教えてくれたり、「いっしょにやるよ」と手助けしてくれるかもしれません。

 はなから無理だ、もしくは、今は無理だからいつかね、と流していたこと。それをパチンと切り替えて、「思いつきは、100パーセント実行する!」。時間、お金、人手……、さまざまな制約を全部いったん頭から出して、とにかく一歩を踏み出す習慣を身につける。すると何か面白いことが起こりそうな――。

 ちなみに、このブログも「思いつきは、100パーセント実行する!」のひとつです。1年半前に出版社を起ち上げようと思ったものの、資金も時間も知識も、ないないずくし。でも、前田めぐるさんの「ネットショップは自分ひとりで完結できる」(2018年7月11日ブログ)という言葉から、「ホームページならできそう」と思い立ちました。

 後藤由紀子さんが好きな雑貨を並べる「hal」のように、自分の好きな文章を並べる「まさ出版の日記」という小さなお店を開こう。思い立ったその日に、ワードの文章をブログに貼り付けて、わずか10分で開店準備が完了しました。まさに、「いちばん簡単で、今すぐできること」。

 編集者Iちゃんが提案してくれた「感想文指導つき一日学童」も、プログラムとテキスト作って、場所と託児スタッフを確保して、お客さん集めて……と考えたら、いつになることやら。そこで、息子に教えたときの経験をもとに、私なりに読書感想文の書き方をまとめて、「ママのための読書感想文講座」(2018年7月18日ブログ)をアップしました。これも、「いちばん簡単で、今すぐできること」。

 小さな一歩を繰り返しても、最初に想定していた夢がかなわないこともあるでしょう。「それでも、一歩前進に変わりはない」と松浦さんは言います。「なぜなら、ダメだったということは、この道は行き止まりというサインだから。失敗は必ず、次の新しい道を教えてくれる」。新しい道をまた、くるくる小さく前進しているうちに、ああこれが本当に目指していたものだったと、心から思える目標にきっと出会えるはず。

 どんな方向に転がるのか、今のところ検討もつきませんが、次のターゲットは、娘が今朝思いついた”別荘”(笑)。

「思いつきを全部試していけば、やがては直接的にビジネスにつながっていく場合もある――僕はそう信じている」(松浦さん)。

仕事とは関係なく何かを楽しむことが重要なの KANAKOさん(カウンセラー)

ホームドクターならぬホームセラピストのKANAKOさんの言葉です。私の顔を見るたびに、耳にタコができるくらい、こう繰り返すのです。「仕事とは関係ない楽しみ」を見つけてください。仕事も趣味も、「何かにつながるから」とか「人の評価」ではなく、「自分が何に幸せを感じるかを中心にして考える」という習慣を身につけて下さい。

 最初はぴんときませんでした。なにしろここ20年、仕事以外に趣味と言えるものがありません。ダンス、縫物、映画、音楽、思いつく限りあれこれ試してみましたが、どれも夢中になる感覚がない。まあ無理にやることもないなとあきらめていたところ、ある日、ひょっこり降ってきました。

 2018年5月30日、朝のランニング&ヨガの最中に、文章がわーっとわいてきたのです。これを書き留めておきたいと思い、1年以上前にアドレスだけ取得していたブログにアップしました。それが、この「masasyuppanの日記」です。

 とくに続けるつもりもなかったのですが、その後、毎朝文章が浮かぶようになり、書き留めています。メモするのに忙しくて、ランニングではなくほとんど歩いてばかりということもあります。そして、ふと「ああこれが、KANAKOさんが言っていた〈仕事とは関係ない楽しみ〉なのでは」と気がついたのです。

 ブログを書くとき、「これが何かにつながるかも」とは考えませんし、もちろん原稿料もありません。ただ、浮かぶ文章を書き留めておきたいという衝動にしたがっているだけです。100%自分のためだけに書く文章。

 「書くことの何にそんなに惹かれているのか」と考えたとき、映画『レミーのおいしいレストラン』のワンシーンを思い出しました。主人公の天才シェフ(ネズミ!)が、料理の楽しさを音楽にたとえて表現する場面。食材のひとつひとつが美しいメロディーを奏で、それらを組み合わせて料理をすることで、絶妙のハーモニーが生まれる――。

 私にとって文章を書く楽しさは、まさにこれと同じ。たとえば、友人に聞いたエピソードと新聞で読んだ記事。バラバラだった二つの話を自分の言葉でくっつけたら、ワクワクする展開のストーリーが生まれる。ハーモニーになった瞬間、頭の中で曲のクライマックスが鳴り響きます。

 「レバレッジ」シリーズで知られる本田直之さんは、「仕事とは関係ない楽しみ」を見つける方法について、『強く生きるノート』(講談社)の中でこう述べています。 「僕は何かをやろうとするとき、お金を払ってでもやりたいことなのか、と考えます」。

 さらに、仕事とは関係なくスタートしたことが、ビジネスにつながる可能性もあると本田さんは言います。「お金を払ってでもやりたいことには、それだけ自分の熱意や能力を注げるので、それが最終的にはビジネスにつながったりするのです」。

 ここで、楽しい、おもしろいと思えるものをたくさん持つのがポイント。

 「最初はタネなので、極論を言えば、お金はもらえなくても、タネがいっぱいあれば、いずれ、どこかで何かになったりするわけです。もちろん、芽が出ないものもあると思います。僕にも結果的に、何にもならなかったものがいっぱいあります。そのうちの何個かが花開いて、ビジネスになった、というだけのことなのです」。

 心から楽しいと思っていることは、努力しなくても続くはず。「10年、20年と時間をかければ、何かが花開いてくる可能性が出てきます。そういう長いスパンで考え、取り組んでいくことが大切なのではないかと思っています」。

 ついビジネス頭になりそうなとき、本田さんのシンプルな問いを思い出します。「これは、お金を払ってでもやりたいこと?」。

 

「好きな仕事に情熱を燃やせば、あなたはその道でブレイクしないわけがないのです」『運の流れにのる、たったひとつの方法』中野裕弓著大和出版

世の中に自分のことを知ってもらうには、売り込みではなく情報やノウハウを提供することが大事なのです。本田直之(レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO)

『7つの制約にしばられない生き方』本田直之著(大和書房)

 

 日本でもトップクラスの人気を誇るある美容整形のクリニックは、営業も売り込みもまったくしていないのに、お客さんが集まるようになったそうです。

 どうしてか?

 もちろん一番大切なのは、施術のスキルアップを重ねること。プラス、世の中に知ってもらうために、あることをしました。それは、クリニックのホームページに、患者さんが知りたいと思う情報をアップすること。

 このクリニックは、脂肪吸引を専門にしています。脂肪吸引のメリットだけではなく、「リスクは?」「施術後の経過は?」など、患者さんの立場に立った情報やノウハウを掲載したのです。

 さらに、脂肪吸引に関する相談を無料で受け、それに対する解答をホームページで公開しました。専門家である医師の立場だけでQ&Aを考えても、通り一辺倒の内容になるでしょう。無料相談をすることで、お客さんが「何について不安に思っているか」「何について知りたいと思っているか」、生の声が聞けます。

 無料相談をくるくる続けることで、お客さんが本当に欲しいと思っている情報が、ひとつひとつ増えていきます。情報が積み重なって、ホームページの内容がいっそう充実していくという仕組みです。

 その結果、脂肪吸引について興味がある人がホームページを訪れるようになり、売り込みをしなくても、世の中に知ってもらうことができたというわけです。また、施術をすすめる内容ではなく、脂肪吸引のデメリットもきちんと解説したことで、クリニックの信頼性を高める役割も果たしました。

 つまり、自分のことを知ってもらうには、売り込みではなく、まずターゲットであるお客さんが知りたいと思っている「情報やノウハウを提供することが大事」なのです。

 売り込みをまったくしなければ、最初はなかなか仕事の依頼が来ないかもしれません。「でも、長い目でみれば一度パーソナルブランドを確立してしまえば、あとは向こうから勝手に仕事がやって来てくれる仕組みがつくれるということになるのです」(本田さん)。