夢見ヶ崎の夢見るミニミュージカル 第二場
《二場 明治時代~工場と洪水~》
*BGMフェード・ダウン。
*子どもが目をかがやかせてかけだしてくる。お父さんとお母さんもつづけてでてくる。
●子ども
(むこうのほうをゆびさして)あそこだ、やっぱりチョコレートのにおいだ! たべたい、たべたーい。
●お父さん
これは おかしこうじょうだな。はて、みたことが ない たてものだなあ。
●お母さん
わたしも みたことがないわ。
*暗がりの中から、どこからともなく聞こえるブサの声。
●ブサ
あれは いつのことじゃったか
てらのおしょうさんが まだこどもの ころじゃった
このあたりには たくさんの こうじょうがあって
えんとつから まっかにゃ けむりが でておったのぉ
●お母さん
そういえば おとうさんから きいたことがあるわ。わたしたちが すんでる マンションが たつまえは てつの こうじょうだったって。
●ブサ
そのほかにも じどうしゃのこうじょう でんきのこうじょう おかしのこうじょう……
ありと あらゆる こうじょうが あつまって
「日本一の こうじょうのまち」といわれておった。
まちは こうじょうで はたらくひとたちで ずいぶん にぎわったにゃあ
●こども
へえーー すごいね。
*うなずくお父さん、お母さん
●ブサ
ごほっ ごほっ ごほん
にゃんだか けむたいにゃあ
*3人もせきこむ
ごほっ ごほっ ごほん
●お父さん
それにしても すごい けむりだなあ。あめも ふってきたし ここから はなれよう。
●お母さん
そうね、さきへ すすみましょう。
*BGMがながれる(あらしのおと)
●ブサ
おっと にゃんだか あしが つめたいぞぉ
●お父さん
こんどは みずが ながれこんできたぞ。あめが ひどくなってきた。
●お母さん
はやく ひなんしましょう!
●子ども
だいじょうぶだよ。だって ブサが ついてるもん。
ほら こっちへおいでって いってるよ。はやくはやく……
●お父さん
あめと かぜで まえが みえないぞー!
●お母さん
みて! ほら、やまの ふもとのほう。たいへん、いえが ながされてる!
●子ども
たすけに いかなきゃ!
*暗がりの中から、どこからともなく聞こえるブサの声。
●ブサ
あのときは ずいぶん えらいめに あったにゃあ
たまがわは あばれがわと よばれ
しょっちゅう かわが あふれておった
あのときは きも いえも こうじょうも
にゃがされてしまうほど おおきな こうずいじゃった
わしは みずが にがてじゃから おぼれるかと おもったわい
●お父さん
このまえも たいふうで このあたりは ひどい こうずいになったな
●お母さん
むかしは もっと たいへんだったのね
●ブサ
こうずいの ひがいを なくすために どうしたらいいか
みんなで ちえを しぼったんじゃ
そこで ゆめみがさき どうぶつこうえんがある
かせやまを けずって そのつちを はこんで
ぬまを うめたてたんじゃ
それが いま ラゾーナがある あたりじゃよ
*はっとしたように、子どもが耳に手をあてて、耳をすませているポーズ。
*小鳥のさえずりのBGMがながれる
●ブサ
おやおや ふるくからのゆうじんが あそびにきたようじゃ
けろっ けろけろっ けろっ
●子ども
あ、かえるだ。こんどは、向こうのほうから聞こえるよ。
●お父さん
そうだね、いってみよう!
●子どもとお母さん
いこう!
*幕がとじる。BGMフェード・イン。