ゆめカフェ

夢叶うサードプレイス

【絵本誕生秘話vol.1】まさ、絵本プロジェクトに参加する、の巻

2016年8月。フリーライターのわたしは、ある朝、文章が書けなくなった。何の前触れもなく、突然に。最初は自分の状況がよく分からなかった。明日になったら、1日休めば、もとに戻るだろうーー。

 

ところが、次の日も、その次の日も、何度繰り返しても同じ。パソコンを開こうとすると、涙が出る。自分から〈書くこと〉をとったら、何も残らない。20年間、そう信じてきた。他にできることなどまったく思いつかず、七転八倒を繰り返すこと1年あまり。八方ふさがりの真っ暗なトンネルに、一筋の光がさす転機が訪れた。

 

たまたま参加した障がい者スポーツ講習会で目にした、水泳世界大会の映像。会場の片隅で、周囲の人がギョッとして振り返るほど、号泣してしまった。

 

なぜ、こんなにも心に響き、揺さぶられたのか。片腕だけで、懸命に泳ぐ日本人選手の姿が、力強くわたしに語りかけた。

 

失ったものにしがみつくな。自分に残された機能を最大限に活かせる、オリジナルのスタイルを、編み出せ、磨きあげろ……! 

 

目からでっかいウロコが落ちた。書くことにこだわるのは、もうやめよう。

選手から受け取った「けっしてあきらめるな」というメッセージを胸に、その日から真剣に、とことん、自分自身と向き合った。「わたしに残された機能」は何か。

 

何日も何日も、考え抜いて出た結論。

それは、編集力を活かすこと。ごちゃ混ぜになった材料の中から、光る1点を見つけ出し、膨らませる。原稿を書く仕事を通して身につけた、1点を嗅ぎ取る直感力。それを、今までとは違う舞台で活かしたい。

 

ちょうどそのとき、目の前にあらわれたのが、幸区のプロジェクトだった。

この街は、どういう切り口で見せれば、魅力が伝わるのか。

新たな夢探しの旅が始まった。