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【絵本誕生秘話vol.3】プロジェクト開始早々につまずく、の巻

地域の歴史をテーマにした物語をつくる。そのためには、時代とともにどんなふうに形を変えてきたのか、時系列で知る必要がある。

この歴史調査で、しょっぱなからつまずいた。なにしろ、これまで家と職場を往復するだけの生活で、地域のことをまるで知らない。歴史の資料がどこにあるのか、さっぱり検討がつかなかった。

 

「武蔵小杉の図書館に資料がある」と耳にし、かたっぱしから地元の歴史に関する資料を借りまくった。でも、小倉池伝説や夢見ヶ崎の名前の由来など、ピンポイントの情報は知ることができたが、「時系列の流れ」が分かる資料が見あたらない。

 

 数か月たったころ、ようやく探し求めていた資料にたどりついた。それは、幸区40周年記念誌と日吉郷土史会がまとめた年表。幸区の変遷が、時系列で詳しく解説されていた。 この資料のおかげで、バラバラの「点」だった情報が、「線」につながった。さらに、幸区役所の計らいで、日吉郷土史会のIさんに話を伺うことができ、「点」から「線」へつながった歴史のイメージが、一気に「面」へと広がっていった。

 

Iさんは、年表だけでは分からない、興味深いエピソードを教えてくれた。 「川崎といえば工場」というイメージをもつ人が多いが、昔は見渡す限り田んぼが広がっていて、自宅の庭に、野鳥がたくさん遊びにきていたこと。一番心に残ったのは、古墳時代の話。「史実にはいろいろな説があり、私の推測の部分もありますが」と、Iさんが前置きをして話し始めたのは、日本書紀にも登場するヤマトタケルノミコトとその妻であるオトタチバナヒメの物語――。

 

さまざまな話を聞いて、その時代、その時代の光景が鮮やかに浮かんだ。加瀬山を中心に、時代とともに大きく変わっていく風景。ここで暮らした人たち。壮大な歴史に想像が膨らみ、漠然としていた物語のイメージが少しずつ見えてきた。