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小さな、小さな、小さな一番を取ることを突破口にしたのです  ひすいこたろう(コピーライター)

『名言セラピー』ひすいこたろう著(ディスカヴァー・トゥエンティワン

サトーカメラ」の創業者、佐藤勝人さんのお話です。栃木県でわずか60坪のカメラ量販店を始めたのが24歳のとき。従業員は数人だし、ビジネスの経験もありません。マンパワーも経営ノウハウも、大手量販店とはアリとゾウほどの差があります。ド素人がいきなり店を始めても、最初は見向きもされなかったことでしょう。ところが、「他の追随を許さない業界初、圧倒的地域一番店」になります。

 なぜ、こんなミラクルが実現したのでしょう。佐藤さんが最初にやったこととは……

 「SONYのハンディカム」ひとつに、商品を絞ること。

 家電量販店と言えば、ふつうはビデオやテレビ、洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫、エアコンなど、品ぞろえが豊富ですよね。でも、佐藤さんは、得意なカメラ1つに絞ったのです。さらに、カメラの中でも、メーカーはSONY、機種はハンディカムと「小さな、小さな、小さな1点」にねらいを定めました。その1点以外は、すべて捨てたのです。社員は、SONYのハンディカムについて徹底的に勉強して、めちゃくちゃ詳しくなりました。

 「これだけピンポイントに絞り、集中特化すると、案外すぐに地域一番店になれるのだそう」。

 〈一番〉というのは、どんな広告よりも宣伝効果大。あとは、必死に売り込みをしなくても、口コミで広がっていきます。他の商品も売れるようになります。こうして、圧倒的な地域一番店になったのです。

 「小さな、小さな、小さな一番を取ることを突破口にした」例が、もうひとつあります。『35歳までにやめる60のこと』中谷彰宏著(成美堂出版)で紹介されていた、ある料理店のお話。石垣島の「辺銀食堂」は、どこにでもある一般的な中華料理店でした。

 そこのご主人、餃子につけるために置いていたラー油が好評だったことから、なんと「ラー油」ひとつに商品を絞ることにしました。料理店を閉めて、ラー油屋さんを始めたのです。ラーメンでもチャーハンでも餃子でもなく、ラー油です。

 「あの店のラー油がおいしい」といううわさはどんどん広まり、やがて、全国からお客さんが来る大繁盛店になりました。1人1本限定のラー油を買いに、わざわざ飛行機に乗って来るほどのファンがいるそうです。

 自分にとって、「小さな、小さな、小さな一番」になれる分野は何か?

 これは、イチから探す必要はありません。

 前述の本の中で、中谷さんはこう述べています。「お客様のヘンなオーダーを思い出してください」。お店のメニューには載せていない、イレギュラーな注文ということです。

 辺銀食堂も、餃子はメニューに載せていたけど、ラー油は商品ではありません。あるときお客さんに「このラー油、売ってもらえませんか」と言われたそうです。イレギュラーな注文を聞き流さず、「小さな、小さな、小さな一番」を見つけたのです。

 あれもこれもと首をつっこむと、けっきょくどれも中途半端になるでしょう。パーソナルブランドを確立するためには、まず自分のピンポイントをひとつ見つける。小さな針穴をあけてから、ひとつひとつ広げていくことが重要なんですね。

ここに来るときはとにかく、”何もしないため、自分を休ませるため”だけの時間を過ごすのが目的 カロリーヌ・ヴォージェルサング(レストランオーナー)

『パリジャンたちの週末の家』エディション・ドゥ・パリ編(アシェット婦人画報社

 フランスの別荘を撮影した写真集 『パリジャンたちの週末の家』。いつも手元に置いているお気に入りの一冊です。仕事の合間や眠る前に、ゆっくり眺めていると、時間と空間をひとっ飛び。南仏の別荘でのんびりヴァカンスを過ごしているような、非日常の気分を味わうことができます。

 南仏の景色が美しいのはもちろん、一番素敵だなと思うのは、パリジャンたちのヴァカンスの過ごし方。休日と言えば、たまった家事をやらなきゃ、家族サービスでレジャー施設へ……というイメージがありますが、それとはまったく異なります。

 「ここに来るときはとにかく、”何もしないため、自分を休ませるため”だけの時間を過ごすのが目的」。

 つまり、パリでの忙しい日常を離れて、「何もしない」ことこそ、別荘に来る本当の目的。ワインを飲みながら、おいしい食事をいただく。本を読み、家族と語り、音楽を聞き、好きなときに昼寝をする。その日の予定を計画したりせずに、心赴くままにやりたいことをする。

 昔から、一週間の七日目を「安息日」と呼び、仕事や家事をしないという習慣があったのだそう。週に一度、「しなければならないこと」を頭から出し、「体と心の声を聞く」モードに切り替える。安息日は、心身に十分なエネルギーを充電するために、昔の人が編み出した知恵なのでしょう。

 別荘はないけれど、おうちで安息日を実行してみよう。週末にふと思い立ちました。 

 2018.7.28(土)朝のランニング&ヨガをすませたあと、さっそく「別荘生活」スタート。土曜日は保育園の送り迎えがないので、腕時計をはずして、一日中時計を見ないで過ごすことにしました。

 ふだんは、朝から家事をするのですが、今日のために洗濯と掃除を前日の夜にすませ、肉や野菜のストックフードを作り置き。タスクリストは頭から出し、何かするもしないも、その時の気分しだい。

「今何がしたい?」

 まず、ホテルのようなフルーツたっぷりの朝食を、たっぷり時間をかけていただき、食後は、手作りのマンゴーラッシー。

 お腹いっぱいになったら、特大のマグカップにたっぷりコーヒーをいれ、ヘンリー・デイヴィット・ソローの『森の生活(ウォールデン)』を手に、窓辺のソファに座ります。外は、曇り空からいつのまにか台風の大嵐。こんな日は外出もできないし、読書にはぴったり。

 お腹がすいてきたら、今度は昼間から自家製サングリアとストックフードの肉とチーズ。図書館で借りてきた本を読みながら、またゴロゴロ。ちょっと罪悪感がわきそうになったら、家事に手を出しそうになったら、自分に言います。

 今日は、休むのが仕事。思う存分、怠けていいよ。

 どのくらい時間がたったでしょう。ふと気がつくと、日が傾き、雨がやんでいました。「あ、この前Nちゃんの家でごちそうになったベトナム風えびのサラダが食べたい」。今日は、思いついたことを好きなように実行する日です。近所のスーパーにふらっと材料を買いに行き、ヴォサノバを聞きながら、ゆるゆる春雨をゆでます。同じ料理でも、朝バタバタ作るのと、こうしてふと思い立ってゆったり作るのでは、まったく気分が違います。

 夜は、ベトナムサラダをつつきながら、家族といっしょにDVDで映画『耳をすませば』を見たり、アイスクリームを食べながら話をしたり。まる一日、非日常の「別荘生活」を満喫しました。これだけ楽しんで、交通費も宿泊費もかからないのだから、とってもお得な気分です。

 3歳児を図書館に連れ出してくれた夫と、「めし!」と言わず、ご飯を自分で食べてくれた子供たちに感謝。

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《ちょっと裏話》

赤毛のアンAtoZ モンゴメリが描いたアンの暮らしと自然』奥田実紀著(東洋書林)によると、カナダにも古くから安息日の習慣があったようです。

「家事には一週間のサイクルがあり、月曜日は洗濯、火曜日はアイロンかけ、水曜日は縫物、木曜日はバターづくり、金曜日はベーキング、土曜日はそうじと床みがき、といった基本的なパターンが、どの家でも定着していた。日曜日は安息日で仕事はできない日だった」。

 当時は、ほぼ自給自足の生活で、家事は相当大変だったはず。それでも主婦は、ちゃんと「安息日」を設けていたのです。ちなみに、「ベーキング」とはパンやお菓子などを一週間分まとめて焼く日だったのだそう。こんな丁寧で、豊かな生活がしてみたい。子供のころから、「赤毛のアン」のお話が大好きでしたが、大人になってもやっぱり憧れの世界です。

悪いこと嫌なことのほとんどは、感謝を忘れているときに起こります  浅見帆帆子(エッセイスト)

『大丈夫!うまくいくから 感謝がすべてを解決する』(幻冬舎

 

『大丈夫!うまくいくから 感謝がすべてを解決する』の中に、

こんな一節があります。

「なにかがうまくいったとき、自分ひとりだけの力で成し遂げていることなんてありません。目に見える人の力、見えないところで動いてくれた人の力、本当に目に見えない力、必ずこれらがひとつになってものごとが成り立っています」。

 

 著者の浅見さんは、こう述べています。「悪いこと嫌なことのほとんどは、感謝を忘れているときに起こります」。陰で動いたすべての力に、心から感謝したとき、「感謝したくなるようなことが追いかけてきます。〈うれしい〉〈楽しい〉と思っている人に、また楽しいことが起こる仕組みと同じです」

 

 不満のスパイラルより、感謝のスパイラルのほうが、ずっといい。

 今日も感謝を忘れずに。

 

あまり哲学的な歌詞にすると大衆には伝わりにくい。だから、あえて男女の恋愛に置き換えて表現しています 藤井フミヤ(歌手)

日本経済新聞(夕刊)』2018年7月30日(月曜日)

  新聞を片付けながら、ふと歌手の藤井フミヤさんのコラムに目がとまりました。ずいぶん長く活躍されているんだなあ。何歳くらいなんだろう。へえ、もう56歳なんだ。実年齢と比べると見た目が若いなあ、などと感心しながら読んでいると、さらに、へえ、と驚くことが書いてありました。

 作詞を自ら手がけているという藤井さん。56歳にして、9割が男女の恋愛について書いた詞なのだそう。しかも30歳前後の。

 私など、30歳どころか、1年前のことすら覚えていない。どんなことを考え、どんなことに悩んで、どんなことに喜びを感じていたのか。今この瞬間のことしか分からない。分からないというか、興味が持てないと言ったほうが正しいかもしれません。

 それなのに、藤井さんは、私より10歳以上年上なのに、30歳の恋愛について詞を書いている。そのことに驚き、なぜ恋愛をテーマに書き続けているの?と疑問を感じたのです。コラムを最後まで読んで、なるほどと納得しました。

 「本当に言いたいのはヒューマニズムだとしても、あまりに哲学的な歌詞にすると大衆には伝わりにくい。だから、あえて男女の恋愛に置き換えて表現しています」。30歳前後という設定に関しては、「ラブソングとは根本的にそういうものでしょう」。

 なるほど。表現したいのは、56歳の今現在、自分が考えていること。哲学的なこと、人生のこと、それをストレートに詞にすると、小難しくて、説教くさい内容になるかもしれません。難しいことを歌っても、心に届きにくい。怒りや不満といった感情をそのままぶつけても、聞きたいという気持ちにならない。

 そこで、多くの人が共感できるように「伝わりやすい設定」に置き換える。だからこそ、こんなに長く、ヒットメーカーとして活躍していらっしゃるんだな。プロの表現者として、大切なことを教えてもらった気がしました。

 同時に、そうか!とひらめいたのです。これまで、難しいテーマだからと、書くのをあきらめていたことも、設定さえ変えればカタチにできるのではないかと。7年間、心の奥底にしまいこんでいた、あるテーマが浮かんでいました。

 最近、みょうにこのテーマが気になると思っていたところに、この新聞コラム。とても偶然とは思えません。毎日、「感謝」「感謝」と思っていたら、こんなにすぐに良いことがやってくるんだな。ちょっとびっくりです。あらためて、感謝。

本当に欲しいもの、それは社会の中で実態のない成功を目指し、結果を出そうと走り続けることではない。心の内側から湧きおこる幸福感に満たされて生きる、ということなのだ。光野桃(作家、エッセイスト)

 

 

 

 20代のころ、『おしゃれの視線』という本が大好きで、何度も読み返していました。最近、著者の光野桃さんが書いたエッセイを数冊読んで、本当に驚きました。なんと、光野さんがターニングポイントを迎えた年齢が、私とぴったり重なったのです。 何冊かの著書の内容から、光野さんの年表を作ってみました。

 

 30歳 結婚、出産

 33歳 仕事を辞めてイタリアに行き、4年間暮らす

 37歳 帰国して仕事に復帰

 38歳 『おしゃれの視線』でデビューし、猛烈に仕事が忙しくなる

 43歳 目標の10冊を書き終えたあと体調が急激に悪化

 45歳 2年間のスランプのあと『スランプサーフィン』を出版。

 一方、私は30歳で出産し、33歳で仕事をセーブして4年間育児中心の生活。37歳で仕事に復帰してがむしゃらに働き、43歳で体調を崩す。2年近いスランプを経て、ブログをスタート――。

 人気作家の光野さんと比べるのは、はなはだ恐縮ですが、ターニングポイントとなった年齢はまったく同じ。スランプに入った時期が、目標としていた仕事を終えた後ということをはじめ、その時その時の細かい状況まで似ているのです。「思い立ったらなんでも速攻でやらなくては気が済まない。そこに向かって一目散に走ろうとする」(光野さん)という性格も……。何から何までそっくりで驚きましたが、私に限らず周囲の友人を見ても、女性は同じような年齢で、転機を迎えるものなのかもしれません。「四十代は人生の陰りがひっそり忍び寄る年ごろ」と光野さんは言います。

 『スランプ・サーフィン』は、題名の通り、光野さんがスランプの真っただ中にいた45歳のときに出版した著書。2年間続いた真っ暗なトンネルを潜り抜け、光が見えたところで終わっています。

 現在60代という光野さん。その後の人生が知りたくて、『スランプ・サーフィン』の10年後に執筆された『実りの庭』を手に取りました。心身の不調が回復し、パワー全開で仕事を続けていると思いきや、読み進むにつれ、愕然となりました。

 なんと光野さんにとって、45歳からが本当のスランプ。『スランプ・サーフィン』はほんの入り口で、そこから長い長い闘いが始まったのです。

 本文の内容から、さらに年表を進めます。

 45歳で「鬱的状態」に陥る

 46歳休業してバーレーンに移住。3年間鬱状態のまま過ごす

 49歳 帰国し母の介護をする

 50歳 母を見送ったあと、介護疲れから半年間寝たきりの生活

 51歳 5年間の休業を経て仕事を再開

 55歳 『実りの庭』『あなたは欠けた月ではない』を出版。

 光野さんは、こう振り返っています。「ちょうど十年、この十年がまるまる更年期だったとすれば、確かにそうなのかもしれない。もがいてももがいても水面に出られなかった」。

 元の場所に戻ろうと、もがけばもがくほど、ますます深みにはまる。ならば、力を抜いて浮いてみよう。ペースを落として、ゆっくり本を読んだり、周りの景色を楽しんだり。流れに逆らわず、身をまかせてみよう。それが、自分らしいライフスタイルに出会うきっかけになるかもしれません。 

 光野さんは、10年間スランプの旅を続ける中で、大切なことに気がついたのだそう。

「本当に欲しいもの、それは社会の中で実態のない成功を目指し、結果を出そうと走り続けることではない。心の内側から湧きおこる幸福感に満たされて生きる、ということなのだ」(『実りの庭』より)。

ゆっくりすることで、これまでのライフスタイルを見直し、ピンチをチャンスに変えることも多い 岡田尊司(精神科医)

『うつと気分障害岡田尊司著(幻冬舎新書

  体調を崩して、やむなく仕事を辞める――。長年かけて積み重ねてきたキャリアを失うのは、大きな挫折ととらえがちですが、精神科医岡田尊司さんいわく、「ピンチは、チャンスに変えることができる」。

 『うつと気分障害』の中で、2人の偉人の例を紹介しています。ひとりは、五千円札の顔として知られる教育者の新渡戸稲造。35歳のときにうつになり、札幌農学校の教授を辞めました。もうひとり、数多くの名著を残した社会学者のマックス・ウェーバーは、33歳のときにうつを発症し、大学教授を辞めました。

 二人に共通しているのは、次の2点。「十分な療養期間をもつことができたこと」「元の仕事にしがみつかず、病気になる前と後とでは、ライフスタイルを大きく変えたこと」。その後、完全に回復し、病気になる前よりいっそうスケールが大きく、オリジナリティあふれる活躍をしました。 

 『妹たちへ 夢をかなえるために、今できること』(日経ウーマン編著/日本経済新聞社)に、もうひとり「ピンチをチャンスに変えた」女性が紹介されています。

 医師の海原純子さん。女性の心と体をトータルに診療する「女性クリニック」を開設した先駆者であり、随筆家、歌手としても活躍しています。

 海原さんは、激務が続いていた40歳のころ、心身ともに不調に陥り、2年半の間、まったく仕事ができない時期があったそうです。やっと軌道にのった女性クリニックも、やむなく閉じることになりました。海原さんは、休業保険で生活しながら、ゆっくり自分を見つめなおしました。

 「私は何が本当にやりたいのか、どう生きていきたいのか」。

 考えた末に、今までのライフスタイルを180度方向転換することを決断。クリニックの規模とスタッフの人数をコンパクトに絞り、カウンセリングだけの診療に切り替えました。

 原稿の仕事も、以前のように数多くこなすのではなく、自分が書きたいテーマを厳選して、じっくり取り組む。仕事を最小限に絞った分、時間と気持ちに余裕ができたので、学生時代に夢中になっていたジャズ歌手の活動も再開しました。

 立ち止まっている時間は、けっして無駄ではない。新渡戸稲造も、マックス・ウェーバーも、海原さんも、体調を崩してリセットせざるをえなかったからこそ、自分の気持ちと真剣に向き合い、本当に自分らしいと思える道に出会ったのです。

 作家の唯川恵さんは、自身の人生を振り返って、こう述べています。

「うまく行っている時、人は今の幸運を逃したくなくて、そこから動けなくなってしまう。チャンスは運の悪い時にこそある」

『妹たちへ 夢をかなえるために、今できること』より

今、何か気持ち悪いことはない? 中野裕弓(元世界銀行人事カウンセラー)

『運の流れにのる、たったひとつの方法 「捨てること」からはじめよう!』中野裕弓著(大和出版)

 

 著者の中野裕弓さんは、普通のOLから世界銀行本部にヘッドハントされたすごい方。ベストセラー『世界がもし100人の村だったら』の原文を日本に初めて紹介した人としても知られています。

 

中野さんが編み出した、運の流れにのるたったひとつの方法は、

 「いらないものを捨てること」

 

 部屋、もの、時間、心、体……、「何か気持ち悪いことはない?」と自分に聞いて、気持ち悪いことはさっさと手離す。いらないものを捨てたら、からっぽのスペースが生まれます。

 「からっぽのスペースに、今、入れたいものは何?」。

 魔法の呪文を唱えると、あら不思議。いらないものの山に隠れていた、本当にやりたいことが見える。ほんとうの気持ちが見える――。「ほんとうの気持ち」に従うことが、運の流れにのる秘訣なのだそう。

 あなたが「ほんとうの気持ち」に従っていたら、だいじょうぶ。きっとうまくいきます。 

 中野さんによると、「ほんの小さな不快」を見つけるのがポイント。たとえば、手を洗ったあと水が床にたれるタオルかけの位置、壊れたままのクローゼットのドア、ぎゅうぎゅうにねじ込まれた郵便受け。

 こうしたふだんは意識しないような小さな不快が、ガラクタのように積み重なって、「ほんとうの気持ち」を隠しています。

 「気持ちが悪いな、不快だな、そう思うことがあったら後まわしにしないでぜひ改善してください」(中野さん)。

 部屋、もの、時間、心、体。ひとつひとつ、端から端まで、注意深く丹念に眺めてみました。すると、出るわ出るわ、リストの項目を数えると、なんと70もありました。す、すごい……。今まで気がつかなかったけど、こんなにあったのね。夏の休暇を利用して、気持ちが悪いことを、徹底的に捨てて、捨てて、捨てまくろう。

 とりあえず、リストの中から目についたものをひとつ。「仕事鞄の中にペンや修正液、音声レコーダー、名刺入れをそのまま入れているので、バラバラになって取り出しにくい」。

 さっそく伊東屋へレッツゴー。飴色の革製のもので、手触りがよくて、仕事の小道具がひとつにおさまる大きさ……。ありました。現品限りの一品で、ところどころ傷はありましたが、これしかないと一目ぼれして即決買い。

 細々したものを収納して、バッグがすっきり。気持ちが悪いことがひとつ減っただけで、風通しがよくなったような、気分がいいものです。

 よし、この調子で、この夏捨てまくるぞ。