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自分が今、どの位置にいて、全体像はどうなっているのかを考える――  安斎隆(セブン銀行特別顧問)

日本経済新聞2018.8.5(日)日刊 「私の履歴書

 

 セブン銀行特別顧問の安斎隆さんは、高校時代に山岳部に所属し、山登りを通じて、一生の指針となる大切なことを学んだのだそう。

 「気分が良いのは、やはり頂上に着いたとき。山の上から眺めると、周囲の全体像が見えるからだ。登っている最中も、地図があれば自分のいる場所をちゃんと特定できる。この先500メートル進んだら、どんな地形になるか、予測できる。

 自分が今、どの位置にいて、全体像はどうなっているかを考える――。山登りで身につけた姿勢は、人生そのものの姿勢となって意識の奥深くに根を下ろしている」

 子供のこと、自分のこと、親のこと。いろいろな問題で嵐の渦中にいるときは、つい目の前のことだけにとらわれて、視野が狭くなりがち。どうにかしようとやみくもに動いて、ますます深みにはまったり、逆に立ちすくんだまま動けなくなったり、誤った判断をしてしまうこともあるでしょう。

 いったん目の前の問題から離れて、地図を確認して、「全体像」と「今いる位置」を確かめる。そうすれば、今は大嵐だけど、もう少し行けば青空が広がること。頂上までいろんなルートがあること。頂上までたどり着けば、すばらしい見晴らしが望めること。今の状況は変わらなくても、視野が広がるだけで、見える景色はまったく違います。

つい近視眼的な見方をしてしまいますが、日ごろから広い視野で物事を見るように心がけたいです。

未完成の段階で市場に出し、フィードバックを得て改善していくほうが早道です ちきりん(社会派ブロガー)

『マーケット感覚を身につけよう』ちきりん著(ダイヤモンド社)P212

 

 「プロットは考えたし第1章は書けたけど、その後がどうしても進まない、という状態になったら、その時点で第1章だけをネット上に開示してしまってもいいのです。そうすれば、第1章の内容についても、そして今後の展開についても、市場からのフィードバックが得られます」

 

きちんと商品を完成させてから発表するのが当たり前――と思っていたので、「未完成の段階で市場に出す」という考え方には、目からウロコ。ちきりんさんは、新しい成功のプロセスとして、「とりあえずやってみて、どんどん失敗しながら市場からフィードバックを受け取り、進化していく」ことをすすめています。

市場に出すものは、市場の意見を聞いたほうが、確実にニーズをつかめます。市場に直接意見を聞きながら作品を完成していくほうが、近道で、しかも確実な方法でしょう。

 

これは、小説だけではなく、歌やダンスでも、広く注目されている方法なのだそう。YouTubeニコニコ生放送を使って、自分のパフォーマンスを発表し、市場からフィードバックを受け取って、どんどん改良を重ねるのです。歌やダンスと言えば、いい学校や先生の指導を受けて、高い月謝を払って学ぶというのが一般的でした。

 でも、いい学校を出たからといって、いい先生に習ったからといって、高価な教材を使ったからといって、必ずしも市場に受け入れられるとは限らないでしょう。「市場から学ぶ」ことが、今やメジャーな学びのプロセスになりつつある、とちきりんさんは言います。

 

 煮詰まっているときに、自分ひとりであれこれ考えていても、先に進みません。無理やり進めたとしても、市場の評価が得られないシロモノが出来上がるかもしれません。

――失敗してもいいので、作品をどんどん市場に出すことです(byちきりん)――

「自分にとって一番気持ちいい瞬間」を把握し、それを中心に人生をデザインする。 四角大輔(執筆家・アーティストインキュベーター・森の生活者)

『etRouge(エ ルージュ)』(日経BP社)

 四角大輔さんをご存知でしょうか。元大手レコード会社のプロデューサーで、絢香、Superfly、平井堅CHEMISTRYといった有名アーティストを手がけ、ミリオンヒットを連発した伝説の持ち主です。その輝かしいキャリアをあっさり捨て、2010年1月にニュージーランドへ移住。原生林に囲まれた湖の畔で自給自足をベースとした “森の生活”をしつつ、一年の半分は世界中を旅しています。

 ニュージーランドに移住した理由は、ただひとつ。釣りで魚がかかった瞬間、手元にくるびりびりとした振動、全身をかけぬけるような強烈な衝動、それが「自分にとって一番気持ちいい瞬間」だから。

 四角さんは、子どものころから「今日一番気持ちよかったことは何か?」と自問自答するのが習慣だったのだそう。それは「魚がかかった瞬間」。だから、39歳で移住するまで、「仕事も、趣味も、ライフスタイルも、人生のすべてを」、ニュージーランド湖畔の森の生活を実現するためにデザインしてきたと語っています。

 「自分にとって一番気持ちいい瞬間を把握し、それを中心に人生をデザインする。この愚直かつシンプルな思考法こそが、ブレない自分を構築し、本当の幸せをもたらしてくれるのではないだろうか」。

 仕事、地位、年収、もの、家、車、そして趣味。欲しいものが現れるたびに、次々と袋にぎゅうぎゅう詰め込みたくなりますが、四角さんの考え方はいたってシンプル。私のイメージでは、こんな感じ。まず頭の中に真っ白な画用紙を広げて、「自分にとって一番気持ちいい瞬間」を、どーんと真ん中にでっかく描く。それを中心にして、仕事や住む場所、ライフスタイル全体がおのずと決まってくる。だから、プロデューサーの仕事を辞めたのは、大きな決断というより、彼にとってはごく自然な流れだったのでしょう。

 「夜が明けてきた。目の前には、ゴールドに輝く美しい湖面が広がっている。そして、今ぼくは圧倒的な幸福感に包まれている」。湖の夜明けの写真を眺めながら、私の眼前にも、四角さんが目にしている風景が広がりました。こんな幸福感に包まれる瞬間を一番大切にしたい。シンプルにそう感じました。

 家事や育児、仕事、毎日の生活をまわしていくことを考えたら、四角さんみたいに、身軽には動けない、とあきらめるのは簡単だけど、今自分が置かれた環境の中で、実現することは可能ではないか。「自分にとって一番気持ちいい瞬間」を把握し、それを中心に人生をデザインする。これをライフスタイルのコンセプトに定め、実践してみようと考えたのです。

 このコラムは数年前、日経BP社から発行されたフリーペーパーに掲載された小さな記事でしたが、切り抜いて大切に保管し「画用紙の中心」を見失いそうになったとき、取り出して繰り返し読んでいます。

 数年が経ち、あいかわらず毎日ドタバタで、やっていることは以前と大して変わらないものの、大切にしたい中心がしっかり定まっている。ただそれだけで、あれこれ思い煩うことがぐんと減った気がします。

 これさえあればいい、と頭の中がシンプルになり、その他のことは流れにまかせるといった感じです。

「今の中心は何か?」

いつも見失わないようにしたいです。

最初にひらめいたアイデアがいちばん成功しやすい【佐藤可士和(アートディレクター)】

  

 「最初にひらめいたアイデアがいちばん成功しやすい。いろいろ考えてこねくり回すと、

かえってコンセプトがぼやけたりしちゃう」

佐藤可士和×トップランナー31人』(集英社編集部編集英社

 

私は、人が心の中で思った瞬間に、そこへの道がつながると思っています。一番はじめに思ったこと、一番はじめに思い描いた映像が一番パワーが強いということです。

『大丈夫!うまくいくから』浅見帆帆子著(幻冬舎)P66

 

 

  まさ出版を起ち上げたのが、ちょうど3年前。43歳の誕生日を迎えたころでした(最初の名前は、オーダーメイドの本屋さん「BrownBear」)。この2年間、流されるまま、思いつくままやってきて、最初のコンセプトが何だったか、すっかり忘れていました。えーと、私は何をしようと思っていたんだっけ??

 

 最初にひらめいたアイデアがいちばん成功しやすい――。佐藤可士和さんの言葉が心に残り、もう一度ちゃんと思い出しておきたいと考えました。

 

 当時、3人目の子どもが生まれたばかりで、病気になることも多く、制作スケジュールがタイトな雑誌や広告の仕事に無理が生じていました。そこで、子どもが小さいうちは、締め切りのスパンが長い書籍の仕事に切り替えようと、数社の出版社に出向きました。

 

 そこで出会ったのが、個人や企業が自費で本を出版する「自費出版」の分野です。編集者の話を聞いて驚いたのは、その費用です。ページ数や装丁など、条件によって費用の差は大きいのですが、100万円以上も珍しくありません。それでも定年退職を迎えた団塊世代の需要が大きいとのことでした。

 

 ちょうどそのころ本屋で見かけたのが、ネット保険で革命を起こした社長の本。インターネットを使って価格革命を起こす。これだと思いました。自分の本を出したいという人は増えているものの、富裕層向けの価格帯。主婦や若い世代には手が届きません。 

 

 そこで、もっとハードルが低い価格帯の自費出版が実現できないかと考えたのです。こうして、2016年10月、自費出版専門の出版社を起ち上げました。「自費出版の価格革命」、これがコンセプトでした。

 

 一般的な書籍づくりには、大勢のスタッフが関わり、数多くの工程がありますが、それらを見直して大幅にカット。最小限のスタッフとシンプルな工程を考えました。流通も直接。地元の書店だけではなく、カフェや商店、イベントで販売します。

 大手出版社と競合することはありません。そもそもターゲットが異なるし、地域で人気が出た本を大手出版社につなげば、マーケティングの役割を担うこともできます。

 

 これだと思ったアイデアでしたが、当然のことながら、そうは簡単にいきません。1年目、数冊の本を作ったものの、制作費もスタッフ経費も、保育費すら出ない大赤字。しかも、私はライターの経験しかなく、本の装丁やITについてはド素人。満足いく仕上がりにはほど遠いものでした。華々しく活躍して、ギャラを稼いでいる友人ライターと会うと、「私はいったい何をしているんだろう、どこへ向かおうとしているんだろう」と消耗するばかりでした。

 

 こりゃいくらやってもダメだと、2年目はもうあきらめて、もとの雑誌ライターの仕事に舞い戻ることに。この年、ライター業と並行して進んでいたのが、夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトした。

 

 

 

 

 

 

過去は関係ない。未来を選ぶ 【カンフーパンダ2】

 

夢を追う過程で、たくさん傷つくこともあった。

だけど、過去は関係ない。未来を選ぼう。

 

 

はじまりが悲しくても、未来は選べる。今何を選ぶか。

過去は忘れよう。過去は関係ない。今何を選ぶか。

インナーピース(内なる平和)

 

「カンフーパンダ2」を子供たちが見ていたので、私もなにげなく眺めていました。この映画は、私が好きな映画のトップ3に入るでしょう。何度見ても、深く深く心にしみます。

冒頭は、今回見て、いいなと思った言葉。

正確には覚えていませんが、こんな感じのセリフがありました。

主人公のパンダは、両親を死に追いやったかもしれない事件を受け入れ、

それでも、復讐を選ばず、自分自身の未来を選びます。

 

ずっと前、別の話を本で読みました。

ひとりのアフリカ人女性の話。

少数民族同士の争いから、両親と兄弟を奪われ、

思い出して気絶するほどの憎しみを味わったそうです。

それでも、彼女は、復讐を選びませんでした。

今、アメリカを拠点に、子供たちを助ける仕事をし、

世界で活躍しているそうです。

さらに、夫と子供たちに囲まれた温かい家庭を築いています。

彼女は、自分の幸せを選んだのです。

自分のエネルギーと時間のすべてを、復讐ではなく、

幸せのために注ぐと決めたのです。

 

これとはくらべものにならないくらい、小さなことに、

心を乱すことがあります。

 

カンフーパンダの主人公のポーは、

悲しい過去を思い出し、憎しみの感情に苦しみます。

でも、受け入れたとき、静かな、でも強い強い決意に満ちた目に変化します。

その視線の先に、ただまっすぐ、自分が行くべき道だけが見えていたのでしょう。

 

ポーは、自分を傷つけた相手に、温かい笑顔で手を差し伸べます。

インナーピース(内なる平和)

このシーンを、忘れず心に刻んでおきたいです。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる

NHKの番組で、たい焼きが誕生したきっかけを知った。

おもしろい。

 

ある兄弟が、大学在学中に

両親の事情で、突然学費を稼がなくてはならなくなった。

 

大判焼きを売ろうと思いついたものの

「同じ商品じゃ後追いになる」

 オリジナリティをどう出していくか。

 

「もっとおいしくする? もっと安くする?」

いやいや、すでにこのままでおいしいし、

これ以上安くしたら、売っても売っても、もうからない。

 

では、形を変えてみよう。

亀、うさぎ、ホームランボールと

いろいろやってみたけど、売れない

うーん、どうしよう。

※鶴見慎吾さんの演技がおもしろすぎ。

「無理をいって、大学生の役をしていただいています」という

テロップもおもしろすぎ。家族でおなかをかかえて笑った 

 

ところが、傍らでたまたま焼いていた

鯛の形が一番売れた。本人たちもびっくり。

 

狙っていたメインは当たらなくて、

まったく期待していなかったサブが当たる。

 

ビジネスでも学術研究でも、よくそういう話を聞く。

何が当たるか、発明した本人も最初は分からない。

だれもわからない。

 

近道も、魔法のルールもなくて、

けっきょく、あれやこれや思いつくまま

手あたり次第にやってみるしかないんだろうな。

 

じつは、まさ出版も

2年前にスタートした当初、

これだと思いついては、あれこれ試していましたが、

大外れの連続。

 

そんなとき、 たまたま人から頼まれて始めたのが、絵本づくり。

私はライターだから、

文章メインの本ばかり企画していて、

絵がメインの本なんて

2年前はまったく思いつきもしなかった。

でも、これまででもっとも、反響があったのは、絵本だった。

 

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる

の精神でご縁があったことに

一生懸命取り組んでいきたいと思っている。

「朝30分」を続けなさい!【古市幸雄】

 

 

 

『「朝30分」を続けなさい!』古市幸雄著(PHP文庫) 

 

朝起きてからすぐ30分だけ。

天職の時間を持つようにしています。

 もう20年前から続けてきた習慣です。

 

20代。

出版社で、編集者として猛烈に忙しく働いていたとき。

日中は、編集の業務でいっぱいだし

ひっきりなしに人と話したり、電話に出たり。

それでも、原稿の仕事は自分のやりたいことだったので、

会社に行く前、朝イチ30分だけ、パソコンに向かって

ニュースの原稿を一本書いていました。

それをプリントアウトして、行きの電車の中で校正、

会社についてから、合間の時間に修正を入れ、

次の日の原稿の資料をプリントアウトします。

 

30代。

今度は育児休業の時期。

乳飲み子と幼児の世話で、一日が終わります。

このままでいいのだろうか。

そう思って、朝イチ30分、子どもが起きる前に

エッセイを一本書くのを習慣にしていました。

 

そして40代。

今度は、場所をブログにうつして書くことにしました。

誰にも見せていないけれど、

自分のために書く文章です。

 

そうそう。30代でエッセイを書いていたとき。

細々と雑誌ライターの仕事は続けていました。

そのとき、いっしょに仕事をしていた恩師の編集者Aさんに

この「1日1本」の話をしました。

「とにかく1日1本書くことにしています」。

「へえー、それはいい話だね」

 

Aさんは、その後、仕事を早期退職して、北海道への移住しました。

先日、久しぶりにお会いしたとき、

「北海道に行って、新しい仕事が軌道にのらなかったとき、

あのとき聞いた、1日1本の話、私も実行したのよ。

それが今の仕事につながったの。ありがとう」とおっしゃっていました。

 

おいしいものを食べることが大好きなAさんは、

日々のおいしいもの、日々の暮らしをブログに1日1本書いていました。

それが注目を集め、地元の観光協会のホームページを管理する

仕事に出会ったそうです。

今では、「あのブログの管理人といえば、地元では有名なのよ」

とうれしそうに話していらっしゃいました。

 

今の私も、自分がこれから何をしたいのか、

何を書きたいのか見えません。

でも、1日1本、日々のうれしいこと、発見したことを

書いていこうと思っています。

 

毎日毎日、小さな石を置いていくことで、

それが線になり、面になり、

やがて自分ならではのオリジナルのテーマが見えてくると信じています。

 

2019.4.7(日)